こんにちは、福岡就業規則相談センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。
厚生労働省は10月26日、企業が従業員に対し、決済アプリなどで使えるデジタルマネーでの給与支払いを可能とする制度を令和5年4月1日から始める方針を固めました。
労働基準法は賃金の現金払いを原則としていますが、銀行や証券総合口座への振り込みも認めています。
今回の省令改正により、「PayPay」「楽天ペイ」「au PAY」といたスマートフォン決済アプリの口座も入金先として選択できるようになります。
◆給与デジタル払いの概要
●アカウントの残高上限は「100万円」までとする。上限を超える金額についてはアカウントに紐付けた“銀行口座”などへの待避などの対策を盛り込む。
●破綻などにより口座残高の受取が困難となったときに、労働者に口座残高の全額を速やかに弁済することを保証する。
また、不正な為替取引、その他の労働者の責めに帰すことができない理由により口座残高に損失が生じたときに、その損失を補償する仕組みがある。
●少なくとも 10 年間は労働者が口座残高を受け取ることができるための措置を講じる。
●ATMを利用すること等、通貨で賃金の受取ができる手段により、1円単位での現金化を可能とし、少なくとも毎月1回はATMの利用手数料等の負担なく賃金の受取ができるための措置を講じる。
●「給与デジタル払い」は労働者が銀行口座又は証券総合口座への賃金支払も併せて選択できるようにするとともに、必要な事項を説明した上で、労働者の同意を得なければならないこととする。
◆給与デジタル払いの実施のしくみ
企業が給与デジタル払いを実施する場合、どのような運用になるのでしょうか。
《参考:厚生労働省》
企業が各デジタルマネー事業者(資金移動業者)に資金をチャージし、個人へ送金することとなります。
そのため、中間に「給与データからデジタルマネー用のデータへの変換」と、「各運営会社へのデータ連携」を行うためのシステムを必要とする動きがあり、既に参画している企業もあります。
◆導入にあたり
給与のデジタル払いは「社会全体のデジタル化の推進」と位置付けられ、今注目の制度です。
銀行振込よりも手数料が安くなる可能性があり、給与デジタル払いを希望する若手従業員の採用や、定着が期待できます。
銀行口座開設が困難な外国人労働者の報酬の受取手段としても有効です。
一方、不正引き出しやサイバー攻撃への備えや、資金移動業者が経営破綻などをした場合の資金保全、アカウントの本人確認の確実性等についての懸念事項もあります。
また、導入にあたり、就業規則等の内容を給与のデジタル払いに即した内容に変更することも必要となります。
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