こんにちは、福岡就業規則相談センター(社会保険労務士法人サムライズ)です。
労働災害における事故の型別では「転倒」が最多であり、2022年の発生状況では、死傷災害全体に占める割合で4分の1を超えています。そこで、転倒災害の実態と防止対策をとり上げます。
[1]転倒災害の実態
2022年の発生状況における転倒の性別・年齢別の割合をみると、以下のようになっています。50歳以上の女性の割合が約47%を占めており、高齢者雇用が進む中、確実な対策が求められる事項となっています。
[男性]
40歳~49歳 7.3%
50歳~59歳 10.8%
60歳以上 14.6%
[女性]
40歳~49歳 6.6%
50歳~59歳 18.5%
60歳以上 29.1%
転倒によるケガの内容としては「骨折」が約70%を占め、転倒災害による平均休業日数(※)47日です。また、転倒時の類型では「つまずき」が37.8%、「滑り」が31.8%となっています。
※労働者死傷病報告による休業見込日数
[2]必要となる防止対策
厚生労働省発行のリーフレット「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう」では、この「つまずき」や「滑り」について、次のように原因ごとに対策を挙げています。
[つまずき]
- 何もないところでつまずいて転倒、足がもつれて転倒
⇒対策:転倒や怪我をしにくい身体づくりのための運動プログラム等の導入 - 作業場・通路に放置された物につまずいて転倒
⇒対策:バックヤード等も含めた整理、整頓(物を置く場所の指定)の徹底
[滑り]
- 凍結した通路等で滑って転倒
⇒対策:従業員用通路の除雪・融雪/凍結しやすい箇所への融雪マット等の設置 - 作業場や通路にこぼれていた水、洗剤、油等により滑って転倒
⇒対策:水、洗剤、油等がこぼれていることのない状態の維持(清掃中エリアの立入禁止、清掃後乾いた状態を確認してからの開放の徹底) - 水場(食品加工場等)で滑って転倒
⇒対策:滑りにくい履き物の使用
防滑床材・防滑グレーチング等の導入、摩耗している場合は再施工
隣接エリアまで濡れないよう処置
[3]職場のチェックリスト
転倒事故の防止のためには、以下のような項目についてチェックを行い、できていない項目については対策を行う必要があります。
- 通路、階段、出口に物を放置していないか
- 安全に移動できるように十分な明るさが確保されているか
- 転倒を予防するための教育を行っているか
- 作業靴は、作業に適したものを選んでいるか
- ヒヤリハット情報を活用して、転倒しやすい場所の危険マップを作成・従業員に周知しているか
従業員の転倒災害防止の取組を支援するものとして、エイジフレンドリー補助金があります。以前は60歳以上の労働者を雇用する中小事業者が対象でしたが、2024年度からは全ての中小事業者に拡充されています。このような補助金も活用しながら、転倒災害の防止対策を行っていきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「令和4年の労働災害発生状況を公表」
厚生労働省「労働者の転倒災害(業務中の転倒による重傷)を防止しましょう」
厚生労働省「エイジフレンドリー補助金について」
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